フライトデッキから見た香港カーブ

Special Thanks to Cathay Pacific Airways and Captain Ray Corstin.


フライトデッキから見た香港カーブ

 キャセイパシフィック航空250便(ロンドン→香港)において、フライトデッキ(コクピット)で香港啓徳空港の有名な着陸コースである通称「香港カーブ」を体験しました。その様子をご紹介します。


 夕食のサービス後、いつものようにフライトレコードを取りだし、そばにきたスチュワードに記入をお願いした。普段なら30分程度で戻ってくるのだがなかなか戻ってこないので待っているうちにいつの間にか熟睡してしまい、朝食サービスで目が覚めた。ナビゲーション画面を見ると、既にミャンマー上空にさしかかっていた。朝食のサービス後、さっきのスチュワードがやってきて、「キャプテン(機長)がデッキへどうですかと言ってますが・・・」とのこと。これはラッキーと思い迷わずフライトデッキにお邪魔することにした。

 今日のシップは747−467(VR-HOV)。スチュワードに連れられてデッキにお邪魔するとキャプテンとコパイ(副操縦士)にあたたかく迎えられる。「さっきのレコードは君のかい?。まあランディングまでゆっくりしていってくれ」。ちょっとのぞかせてくれるだけかと思っていたので驚いてしまった。

 コパイの後ろのサブシートに座り、一通りまわりを眺めてみる。同じ747でも以前のタイプとは違いディスプレイだけが目立ち、非常にすっきりして見える。ただ高度計や機首の方角はアナログのメーターもついているようだ。

 わざとらしく「FE(航空機関士)はいないんですね」と聞いてみると「FEならここにいるよ」と笑いながら中央のディスプレイを指した。現在ではFEが必要な飛行機は少なくなったのでみんな転職しているということだった。キャプテンのコースチンさんは747−200に10年乗務した後、−400に移ったそうである。その後現在のエンジン状況、残りの燃料、高度、アプローチコースなどをディスプレイやフライトチャートで解説してもらう。予定のアプローチコースはあの香港カーブ。あと数年で新空港チェックラップコックがオープンするので私にとってはこれが最後の香港カーブかもしれない。その最後をフライトデッキで過ごせると考えただけでやはりうれしさを隠せなくなってしまう。

 そのまま37300フィートを保ちながら飛行を続ける。一通りパネルの解説が終わったところで「そこのヘッドセットつけて・・・」。いつも空港でエアバンド(航空無線)片手に聞いている会話が、自分の乗っている飛行機に向かってなされ、タワーからの指示通りに目の前で操作が行われているのである。航空ファンとして感動以外のなにものでもない。

 シンガポール人のチーフパーサーが遊びに来る。「居心地はどう?」「最高です」などと会話するうちにキャプテンが「ナイスままさんだろ〜」とジョークを飛ばす。すかさずパーサーが「(日本語で)ままさんじゃないよね〜」と返す。この会話といい私の下手な英語の質問といい、もしものことで事故にでも遭ってしまうとボイスレコーダーにこんなものが残ってしまって解析する人があきれてしまうだろうなぁ・・・などと考えていると降下開始。フラップを下ろし、ランディングギヤを確認し、キャビンにシートベルトサインを出す。タワーからの指示通りに機首の向きや高度を変えるうちにチェックラップコック上空にさしかかる。少しかすんでよくみえなかったがだいぶできあがっていた。

 さらに高度を下げデッキ内は緊張感にあふれてくる。目の前には啓徳空港の後ろの丘にある赤と白のマーカーが見える。そのマーカーに迫り、直前で大きく右旋回する、それが香港カーブの魅力である。九龍のビル群をかすめながら大きく旋回。目の前は海に突き出したランウェイだ。そして間もなくランディング。燃料もほとんどなくなった機体はリバース(逆噴射)をかけるとすぐにスピードダウンした。その後も耳に付けたヘッドセットからはタキシーウェイやスポットの指示が続く。それをキャプテンとコパイが復唱し、指示通りタキシーウェイを進む。

 タキシーウェイを進む間に、キャプテンが次に降りてきたシンガポール航空の747を指して「すごいランディングだっただろう」。ここのランディングは何度見ても、また何度経験しても迫力があると思う。フライトデッキからだとその迫力も数倍である。

 その後タキシングを続け8番スポットに入る。このスポットにはマーシャラーらしき人はおらず、停止位置を示す電光掲示板がついていた。スポットイン後、デッキ内に安堵感が感じられるようになると同時に最終チェックが行われる。「本当にありがとうございました」というと「友達にCXは最高だって宣伝してくれ。そうすれば俺の給料も上がる・・・」と返してくれた。コパイも「またそのレコードにサインしたいな」とのこと。何度もお礼をしてフライトデッキを去った。

 キャビンに降りても声をかけてくれたスチュワードをはじめ多くのクルーに見送ってもらい、12時間に及ぶCX250のフライトを終えた。このフライトは私にとって一生忘れられないものとなるだろう。

搭乗フライトCX250のパイロットのサイン搭乗券

カーブ中のフライトデッキ山肌のマーカー

このダイナミックなアプローチ(着陸進入)も、新空港チェックラップコック開港により2度と見ることはできません。

建設中のチェックラップコック新空港搭乗機Boeing747-467(VR-HOV)


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